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kamipro編集部・大川義之プロフィール

1973年5月20日、大阪府大阪市出身。中学・高校教師を経て、02年に日本語講師として渡韓。大学で日本語を教えながら、韓国総合格闘技の草創期からその成り行きを目撃。大会の観戦を重ねていくうちに、ライターや通訳、現地コーディネイターとして日本・韓国格闘技業界とかかわりを持つようになる。06年から『kamipro』誌上で韓国格闘技情報の月刊コラム「インサイド・コリア」の寄稿を開始。08年に帰国と同時にダブルクロスへ入社。09年6月よりフリーライターとして活動中。

6月8日更新

韓国格闘技復活のノロシ……のはずが、前代未聞のドタバタ劇が大噴出!?

昨年から1年以上もプロ格闘技大会が開催されていなかった韓国において、先週はMMAイベントのネオファイト、立ち技格闘技の新イベント『武神』が開催され、韓国格闘技界が復活に向けて再始動! ……だが、そんな歓迎すべき2大会で、通常の大会では目にすることが難しい奇想天外な“珍事件”、ドタバタの末に試合のキャンセルが相次ぐなど、プロイベントを長く開催していないことによる問題点をモロに露出した結果となった。今週は、そんな驚きの“事件”が続出したネオファイト、『武神』の現地レポートを中心にお届けします。


■前代未聞! サイズの合うグローブが見つからず、バタービーンの試合がキャンセルに……


6月7日(日)、国際テコンドー連盟(ITF)が全面バックアップする立ち技格闘技の新イベント『武神』が韓国・ソウル市奨忠(チャンチュン)体育館にて旗揚げ戦を開催した。この『武神』には韓国MMAイベントのスピリットMCの元ブレーンや主力選手が出場することで、業界関係者やファンからスキャンダラスな視点でも注目された大会だったが、試合の対戦カードが荒唐無稽な理由で次々に中止になる波乱万丈の旗揚げ戦となった。

最初の事件は、韓国人エースとしてメインイベントでバタービーンと対戦するはずのキム・ジェヨン(チームタックル)の欠場だ。大会開催2日前の時点で、キム・ジェヨンの前所属団体であるスピリットMCがジェヨンとの国内独占契約が残っている事実が発覚。スピリットMC側はこの警告を無視して『武神』にジェヨンを出場させれば、法的措置も辞さないことを通告してきたため、仕方なくメインイベンターのジェヨンは欠場。代役にイム・チビンのジムに所属するソン・ミノの出場が決定したが、『武神』発足時から指摘されていたように、スピリットMCとの関係が泥沼化していることが明らかとなった。

2日前に突然相手が変わったバタービーンだったが、まったく意に介さず大会の前日会見でも、ヤル気満々な様子で試合の豊富を語っていたが、一度狂った歯車は大会当日になっても止めることができなかった。大会のメインイベントの前に『武神』の審判部長がリングに上がり、突如として試合の中止(カード自体は次回大会に持ち越し)を発表。中止したのは、試合前までにバタービーンの拳のサイズに合うグローブがどうしても調達できなかったという仰天の理由からだったため、会場のファンからは一斉に失望の声が上がった。

それもそのはず。この大会で中止になったのは、メインのカードだけではなく、大会前から一国の王子の身分でプロ格闘技の試合に出場することが話題となっていたシーク・モハメド・アルサーニ(カタール)が大会前日の練習中に手首を負傷したことが発覚し、当日になって試合が中止になっていたからだ。

旗揚げ戦で、メインを含む2カードが中止となる異常事態により、舞台裏でスタッフは相当ドタバタしたためか、キム・ジェヨン欠場理由や大会直前に選手が変わったことに対する謝罪のコメントがファンの前で発表されることはなかった。それはアルタークが欠場したことに関しても同じ。主催者側から事情説明はあったものの、ファンに対する謝罪のコメントはなかったのは残念なことだった。

当初9試合が予定されていた大会は結果的に全7試合となった。同大会ではMMA vs 立ち技格闘技のコンセプトで実施されたハンスーファン vs キム・セギ、クォン・アソル vs クォン・ミンソクの試合では、熱戦の末にハン・スーファン、クォン・ミンソクが判定勝ちを挙げている。日本から参戦したテコンドーファイターの高木浩二、森昌典は、ともにMMAを主戦場とする韓国人に判定負けを喫している。

スピリットMCとの契約が残っていることを知ったうえで対戦カードを組み、結果的に大会の2日前に欠場させるという甘さや、海外からの招聘選手に合うグローブを用意できずに試合を中止するという初歩的なミスを犯してしまった『武神』だが、まだこれが旗揚げ戦である。すでに主催社のMXMは、7月26日に『武神』の第2回興行、8月には別ブランドとなる総合格闘技イベントの旗揚げも準備中だという。次回以降の大会で、旗揚げ戦の“悪夢”を払拭することができるか? 


■医師の制止を主催者が無視!? ネオファイトで危険試合発生!!



6月4日(木)には、韓国ソウル市新道林(シンドリム)のテクノマートにてネオファイトが約2年ぶりのプロイベント『ネオファイト12』を開催した。同大会は旗揚げ時から協力関係にあるパンクラスから花澤大介13が参加したウェルター級ワンデイトーナメント、3 vs 3のチーム対抗戦、UFCのリアリティショー『TUF』の最新シリーズに出演したレイ・エルビーが登場するなど、バラエティに富んだものとなった。

韓国で一年以上もプロ格闘技イベントがなかったためか、この大会に出場した選の気迫は並々ならぬものがあり、実績のあるベテランファイターを撃破したチームタックルの秘密兵器ヤン・ヒジュンをはじめとして、多くの選手がアグレッシブな試合を展開し、満員となった会場(規模は1000人程度)を盛り上げた。

だが、この大会で最も注目を浴びたのは、メインイベントで発生した“異常事態”だった。大会のメインは4人参加のウェルター級(73キロ以下契約)ワンデイトーナメントの決勝戦、ソ・ドゥウォン vs パク・イルギュの一戦で、ドゥウォンはコリアン・トップチーム(以下KTT)の中心選手で、イルギュはパンクラスコリアのネオブラッド韓国トーナメント優勝者。試合はドゥウォンが強烈なローキックを中心に優位に進めたが、終盤に目じりを大きくカット。

この出血で何度もドクターチェックが入り、一時はリングドクターも主催者もストップの意思を見せたが、ドゥウォンとKTTのセコンドは額をテーピングでグルグル巻きにしたうえで強硬に試合続行をアピール。だが、主催者はKTTの猛アピールを受け入れて試合続行を決断。だが、テーピングがずれてドゥウォンは片目が見えない状況に陥るなど、危険な状態で試合が続行された。結局、試合は判定にもつれ込み、ドゥウォンが優勝したものの、通常ならばドクターストップ間違いなしの内容だっただけに後味の悪い試合となった。試合後にはドゥウォンの裂傷は20針以上にも及ぶものであることが判明。こうした事態を受けて韓国の格闘技サイトでは、試合続行を要求したKTTサイドや最終的な判断を下した主催者に批判が噴出している。

しかもネオファイトは、かつてサイドビジネスで行なっていた『Gimme5』(ギムミーファイブ)というクラブファイトで、医療体制の不備から選手が試合後に死亡するというリング禍を引き起こした“前科”のあるイベントで、この事件に対し、各メディアが激しく批判したこともあり、その後『Gimme5』とネオファイトは活動停止に追い込まれていた。“世界最強”と言われるエメリヤーエンコ・ヒョードルでさえ、過去にはカットによって高阪剛にTKO負けし、『PRIDE GRAND PRIX 2004決勝戦』という大舞台でもバッティングによる無効試合を宣告されている。いくらセコンドや選手が強硬に試合続行を望んだとしても、大会の主催者は毅然とした態度で試合を止めるべきであっただけに、イベントの復活に水を差す結果となってしまった。

また、同大会ではウェルター級トーナメントの一回戦に花澤大介13が出場し、優勝したソ・ドゥウォンと対戦している。花澤はドゥウォンから次々とテイクダウンを奪い、試合を優位に進めたものの、異常にブレイクの早いルールによりグラウンドで極められず、2R中盤以降は逆にスタンドでドゥウォンのフックやヒザ蹴りを浴び、判定負けを喫した。大会後、花澤は「1Rで5回もテイクダウンとったのも初めてでしたし、パスガードした瞬間にブレイクをかけられたのも驚きでした。パンクラス代表選手として勝ちたかったんですが……」と悔しさをにじませたが、ネオファイトは一時グラウンド30秒ルール採用したり、立ち技のみの試合やシュートボクシングのようなルールを導入するなど、グラップラーにとっては厳しいルールのイベントだ。花澤としてはもう一つの敵、ルールにしてやられたかたちとなってしまった。



以上、今週の韓国格闘技情報でした。来週もお楽しみに!